映画『愚か者の身分』について⑩
こんにちは、ジャリです⑩
終盤に向けて、映像の進行が緩やかになる。
出来事の整理や関係性の接続は行われず、場面は静止に近づく。
同時に、主題歌が流れ始める。
歌詞は人物の状況や移動を言語化している。
それまで映像で示されてこなかった要素が、音声によって提示される。
映像内では、行動の因果は断続的に配置されている。
選択の理由や結果は省略され、場面は次へ移る。
全体像は視覚的には組み立てられない。
主題歌は、その欠落部分を横断する。
個別の場面をまとめ、時間軸を一本化する。
人物の状態や方向性が、歌詞の流れに沿って整理される。
この整理は、映像の進行とは独立している。
画面上の出来事と、歌詞が示す意味は完全には一致しない。
ただし、全体の輪郭は音楽側で完結している。
多くの情報が、主題歌に集約されている。
説明されなかった移動や変化が、音声によって補完される。
映像は、その補完を前提に成立している。
結果として、物語の要約は映像ではなく音楽に委ねられる。
視覚的な断片は保持されたまま、意味の整理だけが進む。
主題歌が終わると、進行も終了する。

