壊した瞬間、なぜ一瞬だけ楽になるのか
私は知っている。
壊した瞬間、
ほんの一瞬だけ楽になることを。
強い言葉を投げたとき。
ブロックボタンを押したとき。
「もういい」と突き放したとき。
胸の奥のざわつきが、
一瞬だけ静まる。
あの0.5秒。
あれがあるから、
私は壊す。
0.5秒の安心の正体
あの安心は、
相手を自分が傷つけた安心感じゃない。
「これで白黒がつく」という安心だ。
曖昧さが消える。
宙ぶらりんが終わる。
待たなくてよくなる。
ちゃんと好き?
私は嫌われてない?
どんな私でも離れないでいる?
この気持ちが測れないグレーの時間が、
答えが出ないのが一番苦しい。
だから私は、
自分から終わらせる。
壊した瞬間の安心は、
「自分が選んだ」感覚だからなのかもしれない。
振られるかもしれない未来より、
自分で壊した確定のほうがマシ。
相手に振り回されないで済んだ。
つまり、荒れて闇落ちして病んでる状態から
コントロール権を取り戻した気になる。
でもそれは、
安心ではなく錯覚だ。
本当に怖いのは「嫌われること」ではない
本当は怖いのは、
嫌われることでも、
別れることでもない。
「どう評価されるか分からない時間」
だ。
返事待ち。
既読スルー。
温度の変化。
その不確定さが、
過去の記憶を刺激する。
守られなかった瞬間。
味方がいなかった時間。
突然悪者にされた記憶。
あの頃も、
理由は分からなかった。
だから今も、
分からない時間が怖くなるのではないか?
0.5秒の安心は、
「これで答えが出る」という期待でもあるのかもしれない。
でも実際は、
答えが出る前に、
自分で物語を終わらせている。
壊した瞬間の安心は、
愛が冷えたからじゃない。
不確実さに耐えられなかっただけだ。
そしてその回路は、
恋が動き出すたびに再生される。
壊さずに止まるという選択
だから私は今、
少しだけ違うことをしている。
壊したくなったら、
まず止まる。
0.5秒の安心の前に、
3秒の呼吸を入れる。
あの壊したくなる0.5秒の安心は本物なのか?
それとも、
過去の記憶が暴れているだけか?
そこを見分けるだけで、
ループは少し弱くなる気がした。
壊した瞬間に楽になる人は、
彼を嫌になったわけじゃない。
むしろ逆だ。
本気だから、
怖い。
だから、
怖さの処理を
壊すことでやってきただけだ。
0.5秒の安心は、
救いではない。
ただのスイッチなんだと思う。
そのスイッチを押す前に、
自分の内側を一度だけ観測できたら、
恋の形は、
少しだけ変わるのではないか。
壊すルートに、
自動で乗らなくてもよくなるかもしれない。
