サムスンは、なぜ赤字になったのか?
こんにちは、ジャリです。
サムスン電子が赤字を出しました。
この事実だけを見ると、多くの人は
「経営判断の失敗」「不況」「競争の激化」
といった理由を思い浮かべるかもしれません。
けれど、それらはどれも表層の説明にとどまります。
赤字の本質は、もう少し手前のところにあります。
それは、
サムスンが何かを間違えたというよりも、
サムスンがこれまで最適化してきた前提条件そのものが変わった、
という事実です。
かつてサムスンが勝ち続けられた前提
サムスンが世界最強クラスの企業だった時代、
半導体産業には、ある共通した前提がありました。
• 需要は長期的に右肩上がりで伸び続ける
• 技術力と量産力は、そのまま利益に結びつく
• 在庫は将来の売上になる
• 巨額投資は競争優位を生む
この前提のもとでは、
良いものを
大量に
早く
安定して作れる企業
が、自然と勝ち続ける構造になっていました。
サムスンは、この前提にとても忠実に適応してきた企業です。
だからこそ強く、長いあいだ勝ち続けてきました。
前提条件①:需要は「成長」から「循環」へ
現在の半導体市場は、
「作れば売れる」世界ではなくなっています。
• PC・スマートフォン需要の成熟
• コロナ特需の反動
• 用途の偏在化(AI分野など)
こうした変化によって、市場は循環型へと移行しました。
その結果、
• 作りすぎれば、すぐに価格が下がる
• 在庫は資産ではなく損失になる
• 回復しても、以前の水準には戻らない
という状態が常態化しています。
かつて有効だった
「投資すればするほど強くなる」という考え方は、
そのままでは機能しなくなりました。
前提条件②:「作れる」より「任せたい」
特に先端半導体の分野では、
評価の基準そのものが変わっています。
• 技術的に作れるか
ではなく、
• この会社に任せ続けられるか
この点で、大きな差を生んだのが TSMC でした。
TSMCは、
• 半導体製造に特化した専業企業
• 顧客と競合しない
• 政治的リスクが比較的低い
• 安定稼働の実績がある
という、明確な立ち位置を築いています。
一方のサムスンは、
• 自社製品(スマートフォンなど)との競合
• 国家・財閥構造に由来するリスク
• 非常に広い事業領域
を抱えたまま、「何でもできる企業」であり続けました。
その結果、
技術力はあるけれど、
100%安心して任せられるとは言い切れない
という評価にとどまり、
発注はより無難な選択肢へと流れていきました。
前提条件③:国家主導モデルの限界
かつては強みだった
「国家 × 巨大企業」というモデルも、
今では重荷になりつつあります。
• 意思決定に時間がかかる
• 地政学的リスクを抱えやすい
• トップ不在の期間が長くなりやすい
変化の速い産業では、
慎重で大きな組織よりも、
役割がシンプルで、動きの速い組織
の方が有利になりやすい。
サムスンは、
変化が起きてから対応する構造のため、
不況局面での舵切りが遅れました。
赤字の正体は「失敗」ではない
サムスンは、
• 努力を続けている
• 投資をしている
• 技術を磨いている
それでも、赤字になりました。
これは能力が足りなかったからではありません。
努力・学習・投資が、
そのまま報酬に変換されなくなった状態。
いわば、構造そのものが合わなくなった状況です。
結論:赤字は原因ではなく、結果
サムスンの赤字は、
• 経営ミス
• 技術不足
• 一時的な不況
が原因なのではありません。
前提条件が変わった世界で、
これまでの勝ち方を続けた結果として、
表に現れただけです。
赤字は「失敗」ではなく、
世界が別のルールで動き始めたというサイン。
私は、サムスンが復活するかどうかを予測したいわけではありません。
ただ、
かつて有効だった前提条件が、
静かに効力を失っていく過程を、
同じ地点から見ているだけです。
そしてこの変化は、
企業だけでなく、
個人や社会にも、すでに起きているものでもあります。

