映画『愚か者の身分』について⑦
こんにちは、ジャリです。
ある人物は、物語の前半で準備を重ねている。
行動は計画的で、状況を先読みする姿勢が繰り返し描かれる。
周囲との関係も整理され、役割は安定して配置されている。
出来事が発生する。
それは突発的で、個人の選択によって回避できる種類のものではない。
発生の直前までに用意されていた段取りは、その場で中断される。
出来事の後、同じ人物が再び画面に現れる。
行動は継続しているが、内容が変化している。
準備や管理に向けられていた動きは、別の対象へ向かう。
判断の速度は落ちていない。
ただし、判断の目的が変わっている。
先を読むための行動ではなく、目前の関係を維持する動きが増える。
周囲の人物からの扱いも変化する。
相談される立場から、世話を受ける側へと位置がずれる。
それに伴い、発言の重みも調整されていく。
この切り替えは明示されない。
役割変更を示す台詞は置かれず、場面の連なりによって成立している。
そのため、変化は連続したものとして処理される。
多くの場面で、前の役割が参照されない。
用意周到だったという情報は更新されず、別の振る舞いが前提となる。
過去の行動との接続は、意図的に省かれている。
結果として、人物は新しい役割に収まっていく。
切り替えに対する抵抗や混乱は、描写として保持されない。
物語は、その状態を前提に進行を続ける。
